うわさのアニメを見てきたよ

ゲド戦記

前評判の悪さは知った上で見に行ったけど、「みんなは最悪っていうけれど、自分が見たらおもしろいところを見つけられるかもしれない」ってのは、自分を過信し過ぎていたと反省したわ。 そして、見て「うわあ……」ってなって、「どこがダメだった……?」って友達とダメ出ししあうのが、正しい楽しみ方の気がしてきたよ。

とりあえず、部分部分良いところもあるんだけど、色んなことがもったいないアニメで、宮崎吾朗はアニメよりも映画が撮りたかったんじゃないか? みたいな、アニメである必要がまったくないアニメだったなーと思った。実写の方がまだ良くなった気がする。

偉大なる王(父親)を殺した王子(息子/主人公)っていう宮崎駿宮崎吾朗の関係を連想する設定を使ってる時点で「主人公=吾朗」って見方をされるって分かってやってるんだろうと思うから、主人公があまりに空っぽ過ぎるのが、吾朗の人間の中身のからっぽぶりを表しているようで、なんともはや……。
主人公のアレンって、「しゃべらない」「行動しない」「流される」の3つで形成されてる性格で、始終ほとんどしゃべらないし、周りのゲドやテルーが全部必要以上にしゃべってくれて、行動も周りに促されてからじゃないと行動しないし、やっと自ら動いたと思ったら、周りが言った言葉をそのままオウム返しして叫んだり、「どうなのよ、それって……」って思うことはやむえない。
あと、登場人物の動機付けが全員弱すぎるし、背景もまったくわからん。説明不足でわからんことが多いのに畑を耕してるカットとか、日常のカットが無駄に長くて、それで時間取っちゃって、物語の重要なメッセージはゲドに長セリフで何度も何度も喋らすし、アニメでやってる意味なし。相田みつをのようにゲドのセリフをカレンダーにして発売したらどうかね。世間にメッセージを伝えたいならそれで充分。それとも、これくらい分かりやすく伝えないと観客はわからないと、バカにしてるんだろうか? とか思っちゃったよ。

んで、

ゲド戦記の監督が押井守にダメ出し
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/745995.html

http://www.ghibli.jp/ged_02/20director/000252.html
昨日、ジブリの試写室で
押井守監督の最新作『立喰師列伝』の試写を観ました。
(中略)
押井さんは、私に対して一方的な親近感をもってくれているらしく、
立喰師列伝』を、ぜひ観てほしいということでした。
私は、押井さんにもうひと花咲かせてほしいと思っています。
だから感想は、一言。
もう一度、同じテーマで、
サービス第一のエンターテインメントに挑戦してほしい、
これだけです。


って、「え……っ?」とか思うようなこと言っちゃってるし、ゲドにテーマを長々と何度もしゃべらすのが「サービス第一のエンターテインメント」なのかなあ? とか思ってしまうよ。
上記の文章は、押井守とは親しい間柄でそういった口も聞ける仲だから……と勝手に想像しておくけどさ。

それと、今までのジブリアニメで一番違う点は、「人間に悪意を持って描いている」っていう点で、性格の悪い登場人物が多い。んで、最後まで性格の悪いままで終わる。性格の悪さは改善もしないし、救いもしない、と。出しっぱなしで放置。吾朗は冷たいやつだなーと思ったよ。
そんなに父親と違うものをやりたいなら、ジブリでやらなきゃいいのに。絵柄もジブリのスタンダードなものを使わなければいいのに、と思ったよ。まあ、でもジブリの冠をつけないとスポンサーがつかなくて製作費が無いんだろうけどさー。 自分は気が進まないのに電通とか鈴木Pに担ぎ上げられちゃってシンドイことこの上ないかもしれないけどさー。


と、色々いったけど、一番感じたのは、「吾朗はアニメに愛がない」。
これにつきると思うわ。
ゲド戦記』は、みんな"仕事"で作ったんだろうなーと。 まあ、近年のジブリアニメがそんなに良かったわけではないんだけど……。わたしの中だと面白かったのは「魔女の宅急便」までだし。

んで、口直しに帰りに『アップルシード』のDVDを借りたら、良質なアニメ(3DCGだけど)だったわ。原作が古いので、映画の脚本も古風なテーマになってるんだけど、ひたすらメカ萌え。メカに対する愛だけで作られた映画だった。ゲドを見たあとに見ると同じ時間でもこれだけの複雑な設定の内容が詰められるから、できないはずはないんだけどなあ……、と思っちゃうのよね。新人とはいえ、普通の新人よりはるかに恵まれた環境にいるのだから。しかしそれだけ、吾朗の周りには、ゲド戦記でいうゲド的存在が欠けていて、孤軍奮闘したのかもしれないけどね。全て推測の域を出ず。

みんな文句言いすぎ!って怒る人もいるけど、やっぱ恵まれた環境の人に期待してしまうのは仕方がないことだと思うのよね。やっぱさ、なんだかんだいってサラブレッドじゃない。それだけ、期待されてることはまったく期待されないよりもありがたいことだと私は思うよ。

あ、あと、そうそう、敵役のクモってキャラクターがマイケル・ジャクソンに似てました。んで、「永遠の若さ!」みたいなことばっかいうのね。集中できねー。